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Vol.1 患者さんの心と体に優しい歯科診療をめざして~日本と海外から訪れる患者さんの為に~

東京・麻布十番 M-Y Clinic院長 歯科医・博士 藤田元規(2015年8月)

プロフィール

藤田元規

藤田元規
歯科医、博士(歯学)

東京・麻布十番 M-Y Clinic院長
HP:http://www.m-y-clinic.jp/

  • 2004年愛知学院大学大学院歯学研究科 博士課程修了
  • 1999年九州歯科大学歯学部歯学科 卒業
はじめに

医療コラム、初回のご登壇は、私共Medi Legatoのアドバイザリーボードもお務め頂いている、歯科医の藤田元規先生です。
日本国内の患者さんのみならず、海外から日本を訪れる駐在員・旅行者の方々の為に、どのような工夫と心配りをなさっているか、以下のインタビューと、藤田先生の「とある1日」を通してお伝えできれば幸いです。

Medi Legato 代表取締役 CEO 廣瀬園子

インタビュー

-歯科医を目指した理由は?

自分のしたことに、正直に結果が出るところに魅力を感じました。
M-YクリニックのMとYは、まごころとやさしさの頭文字を示したものですが、単に治療を行うだけではなく、患者さんの心と体に優しい歯科医になりたいと考えました。

患者さんの心と体に優しい歯科診療をめざして~日本と海外から訪れる患者さんの為に~

-日本の歯科診療所の全国総数は、約68000件(2014年 厚生労働省 医療施設動態調査) コンビニエンスストアの数よりも多いと言われています。
クリニックはその中でも競争の激しい東京都心部にあります。どのようなことに重点を置いて、東京・麻布十番という場所を選びましたか?

利便性はもとより、患者さんが安心して利用できる歯科クリニックをめざしました。

  • 料金や治療に使う素材の安全性を含め、詳しい説明を行うこと
  • 歯科の詰め物による金属アレルギーで苦しんでいる患者さんも多いため、治療に用いる修復物(被せ物や義歯)には金属をほとんど使わないノンメタル歯科診療を心がけていること
  • 木材を使った個室の診察室で、アロマテラピーを併用し、リラックスした空間で治療を行うこと

また、地域の住民の方々はもちろんのこと、東北など地方からも、東京観光と合わせて患者さんがいらしてくださっているのも嬉しいですね。日本人の患者さんだけでなく、海外からの患者さんの受け入れも積極的に行っています。麻布十番は、銀座や六本木にも近く、ペニンシュラやグランドハイアットなど、都内外資系五つ星ホテルからも30分以内で来院することができます。医師が直接、英語で診察を行う点も安心して頂いているようで、ホテルコンシェルジュからのご紹介も多くあります。

患者さんの心と体に優しい歯科診療をめざして~日本と海外から訪れる患者さんの為に~

-クリニックには、日本駐在の外国大使の診察をはじめ、海外からも患者さんが訪れると伺っています。
外国人患者さんの受け入れに際し、工夫していることや、課題に思うことはありますか。

これは、日本人でも外国人でも共通して言えることですが、First Impressionを大事にしています。
初めて診察に来る患者さんは皆、不安な気持ちを抱えています。そこで最初の5分で安心してもらうよう心がけています。他の患者さんも集まる診察室ではなく、個室の落ち着いた環境で治療を行うのも、その為です。
歯科の治療方法も国ごとに異なります。患者さんの育ってきた環境や文化、宗教にも配慮をしながら、自分の要望を聞いてくれる医師だと感じてもらえるように努めることも重要です。
昨今の医療の国際化の動きに伴い、医療通訳の重要性が話題になっていますが、基本的には、医療者は直接、患者さんに治療方針を説明することが望ましいと考えています。医療通訳には、医師や看護師、事務スタッフなどに対し、文化や風習の違い、円滑なコミュニケーションの方法等をぜひレクチャーして欲しいと思っています。

外国人患者さん受け入れの課題としては、未収金の問題が挙げられます。リーマンショックの時、外資系金融機関に勤務していた患者さんが、勤務先の倒産により突然帰国してしまいました。日本の住所と勤務先は把握していましたが、本国の連絡先は分かりません。比較的大がかりな治療を希望されていたこともあり、数百万円の未収金が発生してしまいました。現在では、診察の都度、支払いを行っていただくようにしています」

-歯科医としての今後の夢や目標は?

培ってきた知識とスキルを、日本だけでなく途上国をはじめとする世界の人々に役立てて頂けるよう努めていきたいと思っています。

患者さんの心と体に優しい歯科診療をめざして~日本と海外から訪れる患者さんの為に~

ある土曜日のこと

午前7時15分

いつも通り、六本木駅に到着。六本木ヒルズの脇を通り、クリニックのある麻布十番へ。
途中、けやき坂にあるスターバックスでコーヒーを一杯。いつものメンバーでの朝会に参加。
老若男女、色々な人たちに教えて頂くことが多い。ある方はご自身で起業した会社を閉めてゆったりと生活をされていたり、またある方は大企業の副社長であったり。一週間の出来事を語り合う。
他愛のない会話の中にも、人生のヒントはあるもので、クリニックを運営する上で多いに役立っている。

午前8時

クリニック到着。昨日からのメールや書類をチェックし、講演会のレジメやパワーポイントを作成。
今日の予約の再確認。今日は15人、北海道、名古屋、沖縄、長野、香港からの患者さん。
お昼休み無しの長丁場になる見通し。

午前10時

診療スタート。最初の患者さんはノンメタル治療をご希望。大学病院で金属アレルギーを指摘された為、金属の被せ物をセラミックやハイブリッドレジンに替えていく。虫歯などがあれば、その処置も並行して行う。重度の金属アレルギーの場合には、口の中にあるメタルを全て取り除く必要があるのだが、意外と金属クラウンの中にある金属の土台がそのままにしてしまうケースをよく見る。また最近は水俣条約でも「アマルガム」の危険性を指摘されているが、日本ではその認知度は低く「アマルガム」が口の中に入ったままの人がたくさんいる。
「アマルガム」による治療は日本の大都市ではもうほとんど行われていないが、地方では見かけることがある。
アメリカやヨーロッパの地域から来た患者さんでも見ることがあるが、地域特性と言うものもあるかもしれない。

患者さんの心と体に優しい歯科診療をめざして~日本と海外から訪れる患者さんの為に~

午後1時

都内ホテルのコンシェルジュからエマージェンシーコールが入る。
ロンドンからのゲストのお嬢さんが、矯正ワイヤーが外れ痛みを訴えられているとのこと。
これから1週間、東京滞在の後、京都、大阪に移動し、その後パリ経由で帰るので、1か月はロンドンに帰れないという。ロンドンの矯正医に相談したところ、とりあえず日本で新しいワイヤーを付け直してもらってくれとのこと。何軒か歯科医を当たってみたが、断られた様子。まずは矯正のS先生に連絡して急患対応可能か確認。
治療にかかる時間と費用の概算をコンシェルジュに説明。結果、午後5時に来てもらい、クリニックでの治療後に一緒に矯正医に向かうことにする。

午後4時

診療中にクリニックの自動ドアが開き、「痛い、痛いよ~」と近所の男の子が頬を抑えて一人で泣きながら入ってきた。今、診ている患者さんが予定より20分くらい早く終わりそうなので、診療する時間ができ、ほっとする。道路で転んで前歯がグラグラ揺れて、歯茎も切り、血が出ている。幸い歯は折れていなかったので、固定して歯茎を消毒。父親に連絡して迎えに来てもらう。症状を説明し、薬を出して明日もう一度、診療。
翌日は日曜日だが、こういう時に日曜診療していると良いと思う。男の子も安心したのか、途中からは泣き止んで幼稚園の話まで始めた。

午後5時

ホテルからの問い合わせのあった、ロンドンからの女の子が父親と到着。
ワイヤーが折れて歯茎に刺さってしまっている。すぐにワイヤーを切って消毒。他に傷がついているところや痛いところがないかを確認して矯正医のところへ。矯正医の先生には、タクシーから状況を説明。

午後6時

到着後すぐに処置へ。矯正に使うワイヤーや器具の説明、トータルのコストの説明をして納得してもらう。
クリニックに帰ってからロンドンの矯正医と保険会社に渡す今回の治療の詳細報告書を作成する。

午後7時

若手ドクターの為の勉強会にて今日の事例を紹介。

患者さんの心と体に優しい歯科診療をめざして~日本と海外から訪れる患者さんの為に~

午前1時

1日を振り返りつつ、明日の診療をシミュレーションして就寝。

※ 参考資料
水銀に関する水俣条約(PDF)(p62-63参照)

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