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2016/10世界保健機関(WHO)本部 インターンシップ活動報告

大阪大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学教室
廣瀬 園子(経営管理学修士MBA)
(株式会社Medi Legato 代表取締役CEO)
Medical Facilitator®

【目次】

  • 1. WHO本部(ジュネーブ)への派遣日程
  • 2. インターンシップ派遣の経緯
  • 3. インターンシップのテーマと背景
  • 4. 日本の保健医療における情報共有の課題
  • 5. WHO タバコ・フリー・イニシアチブの広報戦略立案
  • 6. 今後の目標 医学教育交流の拠点「アジア・コンソーシアム」の実現に向けて

【世界保健機関(WHO)本部】

1. WHO本部(ジュネーブ)への派遣日程

平成28年5月10日~9月7日(120日)
【主な用務】
・PND(Prevention of Non-Communicable Diseases)部門
 TFI(Tobacco Free Initiative)チームでの勤務
・WHO総会への参加
・WHO事務局長 マーガレット・チャン博士とインターンとのミーティング
・ジュネーブ国際機関日本人職員会(JSAG)への参加
・在ジュネーブ日本領事館でのレセプション参加

WHO総会の様子(ジュネーブ国連本部にて1 WHO総会の様子(ジュネーブ国連本部にて2
WHO総会の様子(ジュネーブ国連本部にて

2. インターンシップ派遣の経緯

大阪大学医学系研究科 公衆衛生学教室(磯博康教授)では、2015年度より、博士課程の院生をWHO本部PND(Prevention of Non-Communicable Diseases)部門にインターン(無給)として年間2名ずつ派遣している。インターンはメンターであるWHO職員のもと、生活習慣病予防と早期治療に向けたグローバルの連携と共働のあり方、国際保健の専門家としての役割を学ぶ機会を得ている。私はPND部門TFI(Tobacco Free Initiative)のコーディネーターDr Édouard TURSAN D'ESPAIGNET(以下、エドワード博士)のもと、エドワード博士のチームメンバーと共に、タバコ・コントロールに関する業務に従事した。

PND部長  ベッチャー博士
PND部長 ベッチャー博士

メンターのエドワード博士と廣瀬
メンターのエドワード博士と廣瀬

  TFIマネージャー プラサド博士
 TFIマネージャー プラサド博士

事務局長 マーガレット・チャン博士
事務局長 マーガレット・チャン博士

3. インターンシップのテーマと背景

インターンシップのメンターの一人である、エドワード博士とそのチームメンバーは、世界180カ国以上の疾患傾向、たばこ対策とたばこ産業のデータを集めた「タバコ・コントロール・グローバル・データバンク(TCGDB)」の研究開発を行ってきた。私の医学系研究科公衆衛生学教室(博士課程)での研究テーマは、日本と途上国における生活習慣病予防と早期治療の情報共有と、双方向・課題解決型の医療教育交流であり、「喫煙」を生活習慣のひとつと捉え、喫煙由来の疾患予防と早期治療の為に、前述のTCGDBをどのように発信し、行動変容を伴う連携を促進するかについて、企画立案を行った。
こうした企画立案を依頼された理由として、私は阪大の博士課程に進学する以前、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科(MBAスクール)の修士課程時代から、アジアの途上国、欧米の保健医療の課題調査を行い、教育交流プロジェクトの企画、運営に携わってきた背景が挙げられる。エドワード博士からは、私が日本の特許庁と、ヨーロッパ連合(EU)国連の知財機関であるWIPOにMedical Facilitator®としての役務を商標登録し、実務に携わってきた経験を活かして、従来のWHOを頂点としたピラミッド型・トップダウン型のアプローチ以外の効果的なアプローチ手法についても検討するよう指示を受けた。そこで、
トップダウン型に加えて、現場の声を生かしたボトムアップ型の情報共有との融合(図1)と、一般の人々の行動変容、医療リテラシーの向上にも寄与するプロジェクトの検討を開始した。

図1.情報共有における、トップダウン型アプローチとボトムアップ型アプローチ
図1.情報共有における、トップダウン型アプローチとボトムアップ型アプローチ

4. 日本の保健医療における情報共有の課題

WHOの職員がIDとパスワードをもとに利用できるWHOイントラネットには、WHOが独自に調査した各国の保健医療事情の他に、大学や研究機関から寄せられた調査研究報告書やワークショップの資料が保存されている。たばこコントロールであれば、13歳から15歳の喫煙・受動喫煙の実態、子供がTVや映画から受けているたばこ広告の暴露の現状などを保健省と研究機関、中学校が連携し、全国規模で調査したものを、冊子にしてWHOに提出している。欧米だけではなく、インドネシア、東ティモール、韓国などのアジア諸国のレポートも多くある中、WHO以外の組織、研究機関から寄せられた日本の保健医療の情報や研究は、イントラネットにはほとんど掲載されていない。通常は、海外のジャーナルへ投稿することで、国際的に研究成果を発表したものとみなされるが、そうした学術論文が自動的にWHOの各部門に共有される仕組みが存在するわけではない為、能動的にWHOにレポートを届け、共同研究を促進する取り組みが必要とされている。厚労省、研究機関、大学とWHOが共同実施したセミナーやワークショップの資料についても、その会議に参加した職員の手元に保管されたままになることが多く、クラウド化して共有される訳ではない。詳細な調査研究と報告書は、日本語版の冊子だけではなく、多言語の概要版の小冊子、PDFも作成し、WHOをはじめとする国際機関に能動的に届けるしくみづくりもWHOと日本側の双方の関係者にとって重要であると考えている。

5. WHO タバコ・フリー・イニシアチブの広報戦略立案

120日間に及ぶジュネーブでの貴重なインターンシップの期間の後にも、WHOとの共働と研究を継続的に実施したいと考え、以下のテーマ案をもとに、WHOとの共働により日本のたばこコントロールと生活習慣病予防の情報共有を行う、「5か年の共同研究案」をPND部長のベッチャー博士、タバコ・フリー・イニシアチブのマネージャーであるプラサド博士に提案した。初年度は、WHOのたばこ対策に関するセミナーを阪大で実施する計画を立案し、2016年9月現在、11月の阪大吹田キャンパスでのWHOセミナーの開催に向けて、WHOと阪大他の先生方、研究者ともに、準備を進めている。

Theme: The Road to 2020 Tokyo Olympics and Paralympics
For Prevention of Secondhand Smoke
Sharing the policy of Tobacco-Control
Prevention of NCDs(Tobacco Related Diseases)

【2016 Japan Event (29 Nov-2Dec)】
"PR Event of Tobacco Control Global Data Bank"
WHO タバコ・コントロール・グローバルデータバンクの広報と、
日本のたばこ対策(能動・受動)の情報共有
【2017 Japan Event】 "Advertising / Youth"
若年層への健康教育と広告のあり方
【2018 Japan Event】"m Health / m Cessation"
スマートフォンや携帯端末を活用した情報共有
【2019 Japan Event】 "Smoke Free Prefecture Network"
受動喫煙防止法の運用と課題、都道府県・市町村の連携
【TOKYO 2020】 Survey and Education Program for 2025"
非感染症疾患予防・早期治療と、行動変容への取組み

WHO本部で開催しているPNDのコーヒータイムセッション(PND部長のベッチャー博士の誕生日会をかねて、チームを越えた情報共有をする様子)
WHO本部で開催しているPNDのコーヒータイムセッション
(PND部長のベッチャー博士の誕生日会をかねて、チームを越えた情報共有をする様子)

6. 今後の目標 医学教育交流の拠点「アジア・コンソーシアム」の実現に向けて

「日本の医療を途上国の医療者に伝える」「日本式医療をそのまま輸出する」という上から目線のスタンスではなく、「ASEANやアジア全体の保健医療の課題を共に考え、お互いの叡智を結集して共に学び合う場」としての「アジア・コンソーシアム」の構築の検討を進めたい。大阪大学が「場」となり、人々が集まる「拠点」となることができるよう、WHOとアジア各国の大学、研究機関との情報共有、トップダウンとボトムアップのアプローチの融合を促進できるよう、公衆衛生学教室のWHOワークショップ担当として、本部、WPRO、神戸センターの専門家との情報共有の促進と連携強化に貢献していきたい。

事務局長のマーガレット・チャン博士が主催した、WHO本部インターン・ミーティングの時の記念写真(2016年5月)
事務局長のマーガレット・チャン博士が主催した、
WHO本部インターン・ミーティングの時の記念写真(2016年5月)

【謝辞】

WHO本部でのインターンシップは、日本と途上国における保健医療の課題研究と実践の場での教育交流を検討する上で、欠かすことのできない意義深い経験となりました。
WHOの専門家を阪大に招いたセミナーやワークショップの準備や、後任のインターンのサポートなど、自分自身の研究の為ではなく、ジュネーブで学んだことを広く共有し、共に課題解決に取り組もうとしてくださる仲間を増やす努力も重要であることを学びました。
貴重な機会を授けてくださった、岸本忠三先生、医学系研究科、国際交流ご担当の先生方、ジュネーブ滞在中も温かいご指導、ご支援を続けてくださった公衆衛生学教室の磯博康教授、教室秘書、院生の皆様に、心より御礼申し上げます。

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